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運送業許可が取れたらすぐ営業できる?運輸開始までに必要な手続きを解説
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一般貨物自動車運送事業の許可を取得すると、「これでようやく運送業を始められる」と安心する方が多いです。特にこれからトラック運送業を開業しようとしている事業者にとって、許可取得は長い準備期間を経てたどり着く大きな節目ですから、そう感じるのは当然のことだと思います。
ただ、残念ながら許可が下りた段階では、まだ営業を開始することはできません。許可取得はゴールではなく、あくまでスタートラインに立った段階です。人員体制の整備、各種届出、営業ナンバーの取得など、運輸開始までには複数の手続きを順序通りに進める必要があります。
この記事では、一般貨物自動車運送事業の許可取得後から実際に運行を開始するまでの流れを、実務の観点からわかりやすく解説していきます。これから開業を予定している方や、許可が下りたばかりで次に何をすればいいか迷っている方に、ぜひ参考にしてもらえればと思います。
結論:許可取得後すぐには営業できない
まず結論からお伝えすると、運送業の許可を取得しただけでは、すぐに営業を開始することはできません。許可はあくまで「一般貨物自動車運送事業を行う資格を得た」という段階であり、実際に営業を始めるにはその後にいくつかの手続きを済ませる必要があります。
許可取得後に必要な主な手続きを整理すると、大きく以下のようになります。
- 登録免許税(12万円)の納付
- 運行管理者・整備管理者の選任と届出
- ドライバーの確保と社会保険・労働保険の加入
- 運輸開始前確認報告
- 事業用自動車等連絡書の発行
- 車両の緑ナンバーへの変更(車検証の書き換え)
- 運賃料金設定届の提出
- 運輸開始届の提出
これだけ見ても、許可取得後にまだかなりの手続きが残っていることがわかります。しかも、これらの手続きには順序があり、前の手続きが完了していなければ次に進めないものもあります。この点については後ほど詳しく説明します。
なお、原則として許可の日から1年以内に運輸開始を行うことが条件とされています。1年以内に運輸開始ができなかった場合、許可が取り消しになる可能性もあるため、許可取得後はなるべく早めに手続きを進めることが大切です。
運送業許可から運輸開始までの主な流れ
ここからは、許可取得後の手続きの流れを一つひとつ順番に解説していきます。大まかには「許可証の交付 → 人員体制の整備 → 運輸開始前確認報告 → 緑ナンバーの取得 → 運輸開始」という流れになります。
ステップ1:許可証の交付・講習会出席・登録免許税の納付
許可が下りると、まず運輸支局から許可書交付の通知が届きます。指定された日時に運輸支局へ出向き、許可証の交付を受けることになります。この場で、新規許可事業者向けの講習会(新規許可事業者講習会)への出席案内もあわせて受けることが多いです。
講習会では、運行管理の基本や法令上の義務、帳票類の整備方法など、運送事業者として知っておくべき内容が説明されます。初めて運送業を始める方にとっては、実務上のポイントを一通り学べる貴重な機会ですので、きちんと出席しておくことをお勧めします。
また、許可取得後には登録免許税として12万円を納付する必要があります。これは国税であり、銀行などで納付後に領収証書を運輸支局へ提出する流れになります。納付期限は許可書受領後1か月以内とされていますので、早めに対応しておきましょう。
なお、この登録免許税は許可を維持するためのものであり、申請手数料とは別に発生するものです。申請前から資金計画に組み込んでおくと安心です。
ステップ2:運行管理者・整備管理者の選任と届出
許可取得後に最初にやるべき重要な手続きの一つが、運行管理者と整備管理者の選任です。
運行管理者は、ドライバーの乗務管理や点呼の実施など、安全な運行を管理する役割を担います。一般貨物自動車運送事業では、営業所ごとに選任が義務付けられており、国家試験(運行管理者試験)に合格した者か、一定の実務経験を持つ者でなければなりません。選任後は遅滞なく運輸支局への届出が必要です。
整備管理者は、事業用自動車の点検・整備を管理する役割を担います。自動車整備士の資格保有者か、一定の実務経験と研修修了が要件となっています。整備管理者については、選任から15日以内に届出を行う必要があります。
これらの選任届は、実際に運輸開始前確認報告を行うための前提条件にもなっています。「選任はしているけど届出を忘れていた」というケースも見られますので、選任と届出はセットで速やかに進めるようにしましょう。
なお、運行管理者や整備管理者を社内で確保できない場合は、外部に依頼したり、試験対策から支援を受けたりすることも必要になってきます。許可申請中から準備しておくと、許可後の手続きがスムーズになります。
ステップ3:ドライバーの確保と社会保険・労働保険への加入
次に、実際に車両を運転するドライバーの確保と、社会保険・労働保険への加入が必要になります。これは単に人員を揃えるというだけでなく、後の手続きに直接影響する重要なステップです。
一般貨物自動車運送事業では、許可要件として最低5台以上の車両を使用することが基本とされており、それに見合ったドライバーを確保する必要があります。ドライバーは原則として事業者に直接雇用されていることが求められ、個人事業主への業務委託だけでは要件を満たせない点に注意が必要です。
また、雇用したドライバーについては社会保険(健康保険・厚生年金)および労働保険(雇用保険・労災保険)への加入が義務付けられています。そして、この社会保険等への加入が完了していない場合、次のステップである「運輸開始前確認報告」ができません。
社会保険の手続きは年金事務所や労働基準監督署などで行いますが、加入の証明書類が発行されるまでに数日かかることもあります。時間に余裕を持って進めることが大切です。
ステップ4:運輸開始前確認報告
運輸開始前確認報告は、平成27年6月から導入された手続きで、「人員体制が整っていること」「車両の準備ができていること」「適切な運行管理体制が整備されていること」などを運輸支局に報告するものです。
この報告は、運送事業者が実際に適切な体制を整えた上で営業を開始しているかどうかを確認するための制度であり、形式的な届出ではなく実態の確認を目的としています。報告書には、選任した運行管理者・整備管理者の情報、ドライバーの名前や保有免許、社会保険加入の証明、車両情報などを記載・添付します。
提出先は、許可を受けた運輸支局です。不備があると受理されないこともありますので、添付書類に漏れがないよう事前にしっかり確認してから提出するようにしましょう。
この報告が受理・確認されると、次のステップである「事業用自動車等連絡書」の発行へと進むことができます。逆に言えば、この確認報告が完了しないと緑ナンバーの取得ができず、運送業務を開始することもできません。
ステップ5:事業用自動車等連絡書の発行と緑ナンバーの取得
運輸開始前確認報告が完了すると、運輸支局から「事業用自動車等連絡書」が発行されます。この連絡書は、車両を事業用(緑ナンバー)として登録するために必要な書類です。
連絡書を持って陸運局(運輸支局に併設されていることが多い)に行き、車両の車検証を書き換え、白ナンバーから緑ナンバーに変更する手続きを行います。この手続きが完了して初めて、その車両は一般貨物自動車運送事業の用に供する「事業用自動車」として認められます。
なお、緑ナンバーへの変更手続きは、普通の車のナンバー変更とは異なり、連絡書が必要になるため、勝手に手続きすることはできません。連絡書には有効期限がある場合もありますので、発行後は速やかに手続きを進めることをお勧めします。
また、緑ナンバーに変更することで自動車税の扱いが変わったり、自動車保険(任意保険)も事業用のものに切り替える必要が生じます。保険の切り替えを忘れると、万が一の事故の際に補償が受けられない事態にもなりかねませんので、こちらも忘れずに対応しておきましょう。
ステップ6:運賃料金設定届の提出・運輸開始・運輸開始届の提出
緑ナンバーへの変更が完了したら、いよいよ実際の運送業務を開始できる段階になります。ただし、運送業務を開始する前に「運賃料金設定届」を提出しておく必要があります。
運賃料金設定届は、自社が設定した運賃や料金の体系を運輸支局に届け出るものです。「この金額でお客様から料金をもらいます」という内容を届け出るイメージで、自社で自由に設定することができます。ただし、実際に請求する運賃とかけ離れた金額にならないよう、現実的な内容で設定することが大切です。
そして、1台目の車両が緑ナンバーとなり、初めて運送業務を行った日が「運輸開始日」となります。運輸開始後は遅滞なく「運輸開始届」を運輸支局へ提出します。運輸開始届には、実際に使用を開始した車両の情報や運輸開始日などを記載します。
この運輸開始届の提出をもって、一連の手続きが完了します。ここまで来てようやく、正式に一般貨物自動車運送事業者として営業をスタートできるようになります。
よくある誤解:許可取得=営業開始ではない
ここまでの流れを読んでいただければわかるように、運送業の許可と運輸開始はイコールではありません。しかし、実際には「許可が取れたらすぐ仕事を受けていい」と思っている事業者の方は少なくありません。よくある誤解をいくつか紹介します。
誤解1:許可が下りたらすぐ営業できる
前述の通り、許可取得後には複数の手続きが残っています。許可が下りた段階で荷主から仕事を受け、白ナンバーのトラックで運送業務を行ってしまうケースがあります。これは無許可営業と同様の扱いになる可能性があり、行政処分の対象になりかねません。「許可は取った、でもまだ緑ナンバーへの切り替えが終わっていない」という状態での営業は厳禁です。
誤解2:トラックを持っていれば緑ナンバーはすぐ取れる
緑ナンバーへの変更には、運輸開始前確認報告が完了していることが前提です。社会保険への加入や運行管理者の選任届など、必要な手続きをすべて完了させないと連絡書が発行されないため、トラックを持っているだけではすぐに緑ナンバーを取ることはできません。
誤解3:ドライバーを業務委託すれば社会保険の加入は不要
運送業では、ドライバーとの雇用関係が求められます。個人事業主への業務委託だけでは要件を満たせないことが多く、社会保険の加入義務も発生します。「業務委託にすれば社会保険を払わなくていい」と考えるケースがありますが、これは法令違反になる可能性があり、運輸開始前確認報告の際にも問題になります。
誤解4:1年以内に開始すればいつでも大丈夫
許可の日から1年以内に運輸開始が必要という条件はありますが、だからといって余裕を持ちすぎるのも考えものです。手続きには時間がかかるものもありますし、社会保険の加入証明書の発行待ちなどで予想外に日数がかかることもあります。許可取得後はできるだけ速やかに手続きを進めることが賢明です。
実務での注意点:手続きには順序がある
運輸開始までの手続きで特に注意してほしいのが、手続きには明確な順序があり、一つ飛ばして進めることができないという点です。
例えば、ドライバーの社会保険加入が完了していなければ、運輸開始前確認報告は受理されません。確認報告が完了していなければ、連絡書は発行されません。連絡書がなければ、緑ナンバーへの変更はできません。このように、各ステップが連鎖しているため、一つのステップをおろそかにしたり、順序を間違えたりすると、すべての手続きがストップしてしまいます。
実務の現場では、「社会保険の手続きを後回しにしていたら、緑ナンバーの取得が大幅に遅れてしまった」というケースや、「運行管理者の選任届を出し忘れていたことに気づかず、確認報告の段階で初めて発覚した」というケースも実際にあります。許可取得後は、全体のスケジュールを俯瞰しながら、抜け漏れがないように進めることが大切です。
また、帳票類の整備も忘れてはいけません。運行開始後にはトラック協会の適正化事業実施機関による初回巡回指導が行われます。この巡回指導では、以下のような帳票類が整備されているかどうかが確認されます。
- 運転者台帳
- 運転日報(乗務記録)
- 点呼記録簿
- 日常点検表
- 運行指示書(必要な場合)
- 健康診断受診記録
- アルコール検知器の記録
これらの帳票類を運行開始と同時に使い始められるよう、事前に書式を準備し、記入方法を確認しておくことが重要です。巡回指導の時期は運行開始から概ね6か月以内であることが多く、開始後すぐに対応できる状態にしておく必要があります。
特に点呼記録は、ドライバーが乗務前・乗務後に確実に実施し、管理者が記録を残すという運用を徹底しなければなりません。「知らなかった」では済まされない部分ですので、開業前にしっかりと理解しておきましょう。
さらに、アルコール検知器の備え付けと活用も義務化されており、点呼時に使用した記録を残しておく必要があります。安全運行の観点からも、こうした体制を最初からきちんと整えておくことが事業の継続につながります。
許可取得から営業開始、巡回指導までサポート
一般貨物自動車運送事業の許可申請を取り扱う行政書士の中には、許可取得までを業務の範囲とし、その後の運輸開始手続きや帳票整備などの実務サポートまでは対応していないというケースも少なくありません。
許可申請の書類作成は確かに専門性の高い作業ですが、運送事業者の方にとって本当の意味でのゴールは「許可を取ること」ではなく、「許可を活かして運送業を営み、売上と利益を上げること」のはずです。そこまでを見越したサポートができるかどうかが、本当の意味での専門家の価値だと私は考えています。
実際、許可取得後の手続きは、初めて経験する事業者にとって非常にわかりにくい部分が多いです。どの書類をどこに提出するのか、添付書類に何が必要なのか、どの順番で進めればいいのか。こういったことは、慣れていない方には一つひとつが大きなハードルになります。
私が提供しているサポートの内容としては、許可申請から始まり、許可取得後の以下の手続きをすべてカバーしています。
- 登録免許税の納付手続きの案内
- 運行管理者・整備管理者の選任届の作成・提出
- 社会保険・労働保険加入の確認と運輸開始前確認報告の準備
- 運輸開始前確認報告書の作成・提出
- 事業用自動車等連絡書の発行手続きのサポート
- 運賃料金設定届の作成・提出
- 運輸開始届の作成・提出
- 初回巡回指導に向けた帳票類の整備・運用方法のアドバイス
特に帳票類の整備については、「どんな書式を使えばいいのか」「記入方法はどうすればいいのか」というところから丁寧にお伝えしています。初回巡回指導は運行開始後に必ず行われるものですので、指摘事項が多くならないよう、最初から適切な体制を整えておくことが大切です。
「許可を取ったはいいが、次に何をすればいいかわからない」「書類の作り方がわからない」「巡回指導が怖い」というお声はよく聞きます。そうした不安を解消しながら、安心して事業をスタートできるようにサポートするのが私の役割だと思っています。
許可取得をご検討中の方も、すでに許可を取得してこれから運輸開始に向けて動き出す方も、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
この記事では、一般貨物自動車運送事業の許可取得後から運輸開始までの手続きについて解説しました。最後にポイントを整理しておきます。
- 許可取得後すぐに営業開始はできない。緑ナンバーへの変更や各種届出が完了して初めて運送業務を開始できる。
- 手続きには順序がある。社会保険加入 → 運輸開始前確認報告 → 連絡書発行 → 緑ナンバー取得という流れは飛ばせない。
- 許可の日から1年以内に運輸開始が必要。許可取得後は早めに手続きを進めること。
- 帳票類の整備も運行開始と同時にスタートする。初回巡回指導に備えて、点呼記録簿・運転日報などを事前に準備しておく。
- 専門家のサポートを活用すると安心。許可取得後の手続きもまとめて対応してくれる行政書士に依頼することで、ミスやトラブルを防ぎやすくなる。
運送事業を始める本来の目的は、許可証を手に入れることではなく、安定した運送業を営んで利益を生み出すことです。そのためには、許可取得後の手続きや開業後の体制整備まで、計画的に進めていくことが重要です。
わからないことや不安なことがあれば、ぜひ専門家に相談しながら進めることをお勧めします。スムーズな事業スタートができるよう、しっかりと準備を整えていきましょう。

